アルカリのこと

どこの家にも必ずある身近な日用品の石鹸は、実は5000年もの長い歴史をもっています。 石鹸(シャボン)の語源は、ローマ時代、サポーの丘の逸話に由来しています。 丘の上で神へのいけにえにされた獣から滴り落ちた脂と、草木の灰が混じり合い、泡の出る不思議な土が出来上がったといわれています。

石鹸が汚れを落とすのは、混じり合わない油と水の界面をうまく混じり合うよう仲立ちしてくれる界面活性作用によるものです。油分である汚れを引き剥がして水に分散させ、洗い流してくれるのです。

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ちょっと化学のお話し。。。

石鹸は、油脂とアルカリ水溶液の2つが一定の条件下で混ざったときにできます。
油脂とアルカリ物質である苛性ソーダ(水酸化ナトリウム)との反応から脂肪酸ナトリウム、すなわち「石鹸」が生まれるのです。副産物として、保湿作用のあるグリセリンという物質も生まれますが、通常市販されている石鹸はグリセリンが取り除かれて、ほかの目的に使われています。何も引かれていない丸ごとの手作り石鹸には、皮脂や汚れは洗浄するけれど、潤いもちゃんと補ってくれる機能が備わっているのです。

油脂と苛性ソーダはそのままでは混ざりませんから、水に苛性ソーダを溶かしてから油と混ぜます。すると、透明な油がみるみ白っぽくなり、とろみを帯びてきます。丁度マヨネーズを作るような感じです。こうしてできた石鹸のタネは、熱を発しながらゆっくりと石鹸に変わっていきます。これが「鹸(けん)化」という化学反応です。鹸化が終了すると水の役目は終わり、よく乾燥させて(熟成させて)、硬くしまった石鹸にするのです。

苛性ソーダの正式名は、水酸化ナトリウム(NaOH)。
食塩から作られる白いフレーク状のアルカリ性物質です。
水に溶けると、アルカリ性と弱酸性の中間、pH9程度の弱アルカリ性になります。

手作り石けんのpH値

私たちの石鹸は、熟成期間が終わった直後はpH9前後になるレシピです。
そこから数ヶ月寝かせるとpH8に近づき、よりマイルドな石鹸になります。 市販の石鹸のpH値は10が普通ですから、非常にマイルドな石鹸あることが分かります。

今、あなたがお使いの石鹸は目にしみますか?

石鹸というものは、アルカリ性であるということを利用して汚れを落とすものです。本来目にはしみるものです。「今まで使っていた石鹸や洗顔料より目にしみる」ということがあるとすれば、それは今までお使いのものが実は「石鹸」ではなくて、合成界面活性剤であった場合でしょう。
石鹸の形をしていても、科学的には石鹸でない弱酸性の洗浄剤が肌にやさしいとして出回っています。けれど皮膚には自然の中和能力が備わっていますから、pH8やpH9のごくマイルドな弱アルカリ性石鹸を使うことにはまったく問題はありません。 皮膚によいとされる温泉水のなかにアルカリ泉が多いということを考えてみても洗浄剤が弱酸性であるかどうかに、それほど神経質になる必要はないと考えています。


手作り石鹸の場合は、アルカリ性であることのみで汚れを落とすわけではなく、 たっぷり含まれている天然のグリセリンや、過剰油脂のパワーがありますから、pHが低くても 肌に負担をかけずに十分な洗浄力を発揮することができるのです。

アルカリ温泉水の効能

アルカリ性のお湯は、皮ふの角質をやわらかくして脂肪分や分泌物を洗い流し、しっとりとした肌になる「美人の湯」といわれる温泉が多いです。鎮静作用があり、炎症を抑える働きをする。飲用すれば、痛風、慢性胃炎、糖尿病に効き、入浴すれば、じんましん、アレルギー性疾患などに効きます。


【効能】慢性皮ふ病、切り傷、やけど+単純温泉の効能
【飲用】糖尿病、痛風、肝臓病、慢性消化器病

人と犬・・・どこが違うの?

皮膚と被毛は体内と外界とのバリアであり、菌や異物から体を守り、呼吸、感覚の伝達など多彩な働きを担う器官です。また健康状態を映す鏡でもあります。犬の表皮はとても薄く、人間の約5分の1。汗をかくことによる体温調節はできず、多くの犬種に換毛期があります。

犬の皮膚の違いは以下のとおり。
【表皮の厚さ】人:100~200μm、犬:25~38μm 
【皮膚のpH】人:酸性(pH5.5~6.5)、犬:アルカリ性(pH7.5~9.5) 
【キューティクル】人:3~4層、犬:1~2層 
【多い汗腺】人:エクリン腺、犬:アポクリン腺 
【毛】人:一つの毛包に1本、犬:一つの毛包に主毛と副毛(2~15本)など。

 弱酸性? それとも弱アルカリ性?

髪や体を洗うのに適当な液性はなにか。
これについては人間用も犬用も意見が分かれるところです。最近の人間用シャンプーは、皮脂のpHに合わせた弱酸性が主流です。ところが、洗浄剤として長い歴史をもつ石鹸は弱アルカリ性。健康な皮膚は弱アルカリ性の石鹸で洗っても、自然ともとのpHを取り戻せます。

いわんや、犬の皮膚のpHは石鹸と同じ弱アルカリ性。 弱酸性シャンプーで皮膚常在菌を殺してしまう必要もないかとも思いますし、なにより犬の皮膚も被毛も人と同様にたんぱく質と脂肪から成り、基本的な構造は同じです。わたしたちは液性よりも、合成界面活性剤や合成添加物のほうがずっと深刻な問題なのではないかと考えます。
「うちの犬は皮膚が弱い。アレルギーだ」という飼い主さんの話をよく耳にします。
そのようなわんちゃんが多いのは、合成化学物質がひとつの原因かもしれません。

やさしいシャンプーなら、洗う人の手だって荒れないはずです。
身体はわたしたちの意志に関係なく、よい状態でいられるように働いてくれます。
その働きを妨げないことが、健康のための第一歩だと考えています。

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